
はじまりはペヨーテだった その2
『ペヨーテを探しに行こう』
私は意氣揚々と、メキシコシティからアメリカ行きへの列車に乗り込んだ。
その時、車内異様な空氣にギクリとした。ギラギラとした顔つきの男の人ばかりだったのだ。きっとその男たちは北米に仕事を求めて列車に乗っていたのだろう。

普段私は、バスに乗る時、「Ola!」と愛想よく近くの乗客に声をかけていた。地元人と少しでも心を通わせること、それが街中のスリや悪党を避けるためのひとつの術だった。
しかしこの時ばかりは、若い日本人女の私の存在を知られてはいけない。と瞬時に顔をふせた。幸い、友人(日本人男)が面白がってついてきていたので少し心強かった。そうでなければ列車を降りていたかもしれない。
どのくらいの時間列車に乗っていたのか、どうやってペヨーテがある村の宿にたどり着いたのか、今はよく覚えていない。村の名前さえ記憶にない。
ただ列車を降りる時、夜の真っ暗闇で怖かったことと、同じ列車に乗っていた地元の人の助けがあったことをうっすらと記憶している。
泊まった宿は、乾燥した地域の小さな集落にあった。青いペンキが塗られた簡素な長四角い小屋が、4つほどに区切られ、それぞれの小さな部屋に入口ドアがついていて、その小屋の隣には、小さな売店があった。
翌朝早速、宿の主人にペヨーテを探しに行きたいことを告げた。そしてペヨーテが現地の人にとって神聖な植物であることをよく理解していること、私自身がペヨーテの効力を得られる人間かどうか試してみたいことを、つたないスペイン語で真剣に伝えた。
すると、宿の主人は色々と教えてくれた。ペヨーテは宿から14キロほど離れた砂漠に生えていること。地面ペッタリと生えているからなかなか見つけるのは難しいこと。根っこから抜きとってはいけないこと。
行きは車で連れて行ってあげるから、帰りは歩いて帰りなさい。その前に水とバナナを売店で買っておくように言われた。
言われたとおり、500mlの水のペットボトルとバナナを一房用意した。すると、それを見た主人が「それじゃ足りない!2人で10リットルほど必要だ」という。。。
ええっ!そんなに!?
と思ったが、行きは車に乗せてもらえるし、帰りは水を捨てて歩けば良いと10リットルタンクの水を購入した。
こうして、いよいよペヨーテが生える砂漠へ出発することになった。 つづく
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