はじまりはペヨーテだった その1

はじまりはペヨーテだった その1

二十歳の頃、私はメキシコにいた。

今しかできないことがある。と在学中の大学を半年間抜け出し、やってきた中南米。大学ではスペイン語を履修していたし、中南米の音楽やダンスなど、陽気な文化も好きだった。そしてなにより古代マヤ文明の持つ人智を超えた力に惹かれていた。

初めて長期で滞在する異国の地。食文化や生活様式の違いは興味深く、日々の暮らしそのものが刺激に溢れていた。

とにかくなんでも積極的に体験したかった。語学学校に通いながら、ダンス教室にも通ったし、あちこち観光旅行にも出かけた。

近くはティオティワカン遺跡、遠くはグァテマラのジャングルにあるティカル遺跡までめぐり、マヤ文明の圧倒的スケールを肌で感じた。

もっともっと、留学生でも観光客でもなく、人種の壁も超えてメキシコの空氣に溶け込み、大地そのものとつながるような体験をしたいと思っていた。

そんなある日、語学学校の友人から面白い話を聞いた。

「メキシコシティからアメリカへと向かう鉄道の、途中にある砂漠にペヨーテという幻覚作用をもたらすサボテンがある。先住民たちはこのペヨーテを非常に神聖なものとして様々な儀式に用いていたらしい。」

「ただ、ペヨーテの神聖な力によって正しく意識が拡大されるのは、精神性と霊性の高い者に限られる」と。。。

『これだ!』

と直感的に思った。そして、すぐに旅の手配を整えて、アメリカ行きの鉄道に乗り込んだのだった。 つづく

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